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平成29年9月21日議事録

プレゼンテーション①  聖フランシスコ子供寮  釘宮禮子シスター
聖フランシスコ子供寮は児童養護施設です。昭和8年にガブリエル神父が鹿児島で捨て子を育てた事が始まりです。その後ほかの捨て子たちを育てるために聖フランシスコ子供寮は設立されました。創立83年になります。わたしは43年間ずっとこの子供寮におります。聖フランシスコ子供寮の特徴は、2歳から18歳までずっと子供がいることです。行政は、ずっと同じ施設でそだてるのはよくないとの方針で、3年くらいでできる限り親元に帰しています。わたしどもは大体15~6年くらい同じ子供を育てています。ですので、親元へ帰ることができない子供たちを育てています。
長い期間子供たちを育てる中で一番大切に考えているのは、子供たちの心の発達を良い方向に持って行くことです。しかしそれは、大変困難なことです。子供同士も私たちも他人同士ですから、みんな他人同士の中で子育てをすることは、非常に難しいことです。赤ちゃんは最初、お母さんの子宮の中で守られた環境にいますが、生まれてくると不安を抱くそうです。そういった不安の中で、いつも同じ顔のお母さんがお世話をすることで安心するそうです。人間の赤ちゃんは他の動物と違って、生まれてから1年間はお母さんの子宮の中にいるのと同じ、守られた環境で育てなければいけません。この生まれてからの最初の環境は、その後の人格形成に大きく係わっています。
わたしどものところに乳児院からくるこどもたちがいます。乳児院では一人ひとりの赤ちゃんの面倒をなかなかみることができないため、このような子どもたちの多くは大変な状況になっています。人は2歳までに母親に抱っこされて、愛されることで、その後ちゃんと生きていく自信ができる。そのような経験がないと、自信が持てず、生きづらくなってしまいます。
赤ちゃんはおなかがすくと泣いて母親を求めます。母親がそれに応じてミルクをあげることで、赤ちゃんは安心でき、満足できます。それが、赤ちゃんが泣いてもミルクを与えられないと、泣いても無駄だと分かり、泣かなくなります。そうすると、その赤ちゃんは何も反応しなくなり、無表情になります。私どものところに来る子の中にもそのような子が少なからずいます。
残念ながら、子どもは親から受けたことの影響から逃れられません。親からされたことを思春期以降やってしまうことが少なくありません。親からいきなり殴られたり、いきなり怒鳴られたりしていた子どもは、大きくなって、知らず知らずのうちに、他の人にそういうことをしてしまいます。私どもの施設にいる子どもでもそういう子どもがいます。虐待の連鎖と言われますが、なかなかこれを切るのは難しいと感じています。
わたしが若いころ、私がほんとうに心を込めて愛した子どもから「おまえがいるからこの施設はよくならないんだよ」と言われたことがあります。そのとき本当にショックで、お世話になっていた先生に相談したところ、先生から「あなたは母親になれましたね」と言われました。親は子どもが何を言っても、いなくならない、消えてなくならない、その子があなたのことをそう思ってくれるようになった、ということでした。今はもう何言われても気にしなくなりました。
わたしどもの施設では、先生が泊まり込みで子どもたちをみています。ただ、一対一の関係にはなれません。そこでできるだけ子どもと一対一の時間を作り、話しかける、どっかに連れていくようにしています。
私は、毎日施設に泊まり込みをし、いつもご飯作っています。こうすることにより、子どもたちは「この人はいつもいるな」という安心感を得ることができますし、毎日同じ味の料理を食べることで、「おふくろの味」という感覚も得ることができます。子どもたちはこうしたことにより、安定した生活をしているという感覚を持つことができ、落ち着くことができていきます。
乳児院から入ってくる子どもたちの多くは、薬をもってきます。多くは皮膚病の薬です。しかし、こうした子どもたちは、とにかくさすることで治ります。乳児院はすぐ薬をあげてしまいますが、多くの子どもたちはさすることにより治るのです。
小さい子どもの希望は「お母さんが会いに来てくれる」ということだけ。小学校4年生までは親を超えられません。面会したくないとか言えません。そういうことが言えるようになるのは4年生ぐらいからだと思います。

プレゼンテーション②  里親の体験談 ロータリアンM氏
里親の体験談について、お話してほしいということで時間をいただきました。
2年ほど前から、東京都の里親制度を利用して、里親をさせていただいております。
ちょうどもうすぐ5歳になる女子を預かっております。
都内のあるロータリークラブからも、ご支援をされている、東京済生会中央病院の乳児院にいた子供を2歳半ほどで前に預かっています。
私自身も里親をやるにあたり、十分な理解があったとは思えませんが、子供に恵まれなかった事もあり、少しでも何かと思いでスタートしました。いろんな意味で、オムツも取れていない子供を預かるのに苦労をしました。(私より、妻の方が大変ですが) 今では、保育園の年中に通っているので、少しは違った様子になってきているかと思います。
せっかくのいい機会なので、そもそも里親の制度を皆さんに理解して頂き、現状も含めて里親について共有させていただければと思います。
そきほど、子供寮のクリミアンシスターさんから、お話がありましたように、社会養護という言葉で全てが括られているのですが、その中でも家庭的養護の一つが里親になります。家庭的養護では少人数の中で、子供も養育していくということです。通常、乳児院では3歳前までが入所できる期間が現在の制度です。それまでの間に、家庭的養護または児童養護施設に移ります。一番いいのは親元に帰えるのがいいのですが、色々な事情により困難な子供達が存在します。私たちは東京都に委託を受けてということになるので、受託者になります。家庭的養護の中には、養育家庭という形で、よく最近聞かれるかもしれませんが、養子縁組里親もあります。これは、将来養子縁組になるという前提で里親になって子供を預かるという制度です。この制度には、年齢制限があり、25歳〜50歳の夫婦でないと受けられないことになっています。私たちは、この制限もあり里親(養子縁組前提でない)となっております。里親制度で委託される子供は、18歳になるまでとなっています。先ほどお話があった、里親手当目的の方も過去にあったこともあり、今は必ず2年に1回研修を受けて里親として更新される必要があり、厳しい制度になっています。里親は月々子供の養育費用として東京都から支給されることになっています。里親、特別養子縁組里親にもいけない子供は、グループホームや児童擁護施設に行くことになります。グループホームは国の方針でもあり少人数で運営がされることを目指しています。
東京都での社会養護が必要な子供の人数はどれくらいなのか?
最新のデータでは平成27年度3,983名となっていおり、これは18歳までの子供で社会養護が必要な人数です。その中で家庭的養護、グルームホームは、全体の33%にすぎません。国としては、60%程度は家庭的養護にしたいという方針はあるものの、現実の数字とのギャプはかなりあるのではないかと思われます。さらに、里親の養育家庭で預かっている子供は270名です。里親として認定、登録してされている数(既に里親も委託されているものも含む)が510名となります。半分くらいの方が受け入れていることになります。特別養親縁組里親を望んでいる方は227名となり、その中で、実際に委託されているのは31名となります。この数字のギャプは何故かというと、特別養子縁組前提ですので、両親がいないまたは親族が養育できない場合でありか、特別養子縁組を希望する親がいる場合となります。ほとんどの場合には、母親もしくは父親がおり、特別養子縁組を希望していません。日本の制度の場合には親権があること、子供自身がまだ選べる状況ではないこと、特別の理由がなければ養子縁組を拒否する事は可能であるなどが理由と思われます。養育できない親には、社会的養護を子供が受けても、何のデメリットがないのが現状です。
親が養育できないと児童相談所が判断された子は、場合によっては病院から直接乳児院に連れてかいかれ場合や、養育できないと判断されて入所する事もあるわけです。親は親権を渡したくなければ尊重されます。こうした中で特別養子縁組里親は少ないのが現実です。これは憲法の問題もあり、法律的な問題だけで解決できることではありませんが、いろんな障壁が多いのが実態です。
また、子供を里親先に委託する場合にも親の承諾が必要です。承諾されない場合には、里親に委託することもできず児童養護施設に行くことになります。
里親はあくまでも、子供を預かっている事であるので、住民票では同居していて、姓は親の姓のままとなります。もちろん、子供がいじめなどにならないように、保育園や小学校では通り名を使っています。
過去の里親の不祥事などから、子供手当は本人名義の口座に対して保管管理を義務づけられており、厳格な管理もされています。
さらには、里親で預かっている最中であっても、実親が養育可能であると児童相談所が再判定した場合には、委託は解除される場合はもちろんあります。特別養子縁組里親の場合には、特別養子縁組に至れば戸籍は変更となりますので、実親に帰ることはありません。
ここまでが制度的な話になります。実体験としては、乳児院で生まれた時から共同生活のみをしてきています。最初は、子供と交流を始めますが、ある日パパとママが登場するわけです。子供も戸惑いもあると同時、我々も子育て初心者であり両者の戸惑いの毎日でした。他の里親のケースでは、乳児院では男性をあんまり見た事がないので、子供が泣いて交流にならないというケースが起こり、最初の数ヶ月はパパ出禁なんていう笑い話もありました。私たちの場合には、4ケ月の交流から長期外泊を経て、里親が正式にスタートしました。やはり、共同生活ではおもちゃも、みんなのものという事で生活をしてきたので、自分の物をもつ事がありませんでした。このため、何かを欲しいという感情が少なかったり、お金で物を買うという意識が希薄でした。また、欲しい物を我慢するという事も、いろんな経験で身につくのだと思います。我々も、最初はかなり戸惑ったことを記憶しています。
また、子供には試し行動があるという事を習っていました。しかしながら、交流中や家庭に入ってからも試し行動は特段になかったようです。一度だけ、夜中に足が痛いと言って、慌てて救急病院に行ったとき、待合室で実は痛くないといった、ちょっとしたエピソードはありましたが、一回だけで繰り返すようなこともありませんでした。我々自身も色々と学んで行く事も多くありました。
やはり一番慎重になるのが真実告知です。真実告知とは、我々が育ての親であるということを伝える事です。真実告知はかならずしなければならない事です。
第一回目の真実告知はしました。4歳でママのお腹から産まれていないと言われても、どこまで理解できているかはわかりませんが、再度する必要はあるかと思います。子供の年齢にとって育ての父母はなかなか理解しづらい事でもあるのは事実です。貧困の連鎖との関係になるかもしれませんが、家庭的養護が大切だから里親を利用すればいいということだけではないと思います。また、里親やファミリーホームの施設の方々とお話をさせていただく中で、学業の問題という事が多く発生しているそうです。学校の授業や宿題だけをやっているだけでは、クラスでついていけないということかはわかりませんが、特別支援学級や通級といったクラスで学習するケースやボーダすれすれの子供になってしまうことがあるとのことです。
そうなると、学校に行けなくなったり、進学できない、就職できないといったことにつながっているようです。最近の小学校ではプール授業で泳ぎを教えないといったことがあそうです。ほとんどの子供達は保育園でスイミングスクールに入っているためでもあります。ファミリーホームや児童養護施設では、学習塾やスイミングスクールにいけるケースは少なく、難しいのが現実です。我々は普通の子供と同じレベルのことは、本人の希望も聴きながら対応したいと思っています。また、保育園の保護者のコミニューティにも全く同じように入って行く努力をしています。
また、里親会といった、里親ならではの悩みを共有する活動もやっていますが、普通のコミニューティでやって行く事も大切だと思っています。
里親制度について、我々自身ももっとアピールしていかなければいけないと思っています。やはり、特別養子縁組里親が一番いいとは思いますが、色々な課題もあるのが現実かと思っています。
最近では、民間の養子縁組を斡旋する仕組みが出来上がってきていますが、同時に色々な弊害も生まれています。国や都の規制により、今までの届出制でしたが、平成28年度から許可制に変更になっていいます。私の方からみなさんに伝えたかった内容は以上となります。何か質問がありましたらお願いします。

質疑応答

Q.なぜ里親になろうと思ったか?
A.子供に恵まれなかった事もあり、里親として登録したが、登録から4年ぐらいに候補者が出てきたのも現実でした。最初の研修の後、登録認定されてから、里親更新研修も受けていました。

Q.里親になる時希望は言えるのか?
A.年齢や性別などは希望を出せる。あとは、実際に候補者が出てきた時に、交流に進むか否かを選択することになります。
また、里親との交流中に何らかの理由で中止になる場合もあります。

Q.里親として養育して、18歳になった場合に養子縁組に至ることはあるのでしょうか?
A.先輩の方のお話の中では、そういった事例もあるとのことです。

Q.里親として養育されている方は、将来養子縁組もできればしたいと考えているのでしょうか?
A.どれくらいの方が思っていらっしゃるか不明ですが、私はそう思っています。

Q.里親委託が、親が養育できると判断された場合の解除時に、子供の意思は尊重されるのでしょうか? 一般的な親権の場合には、ある程度の年齢になって子供の意思が優先される場合があるが里親の場合はどうなのか?
A.具体的な事例は聞いた事がないためわかりません。親が養育できるということになれば委託は解除されるのではないかと思います。ただ、子供の意思が尊重してほしいと思っています。

Q.子供の習い事などの費用は都より補助されているのか?
A.特別に習い事のための費用として補助はありません。毎月の委託料はいただいております。

なお、当研究会は学習支援を最重点課題として活動することで意見が一致し、第6回研究会は平成30年1月23日15:00より、ガバナー事務所会議室で実施することになりました。